犬の免疫介在性溶血性貧血(IMHA)と輸血治療
症状・診断・救命の流れを解説
公開日:2025年4月18日
犬のIMHA(Immune-Mediated Hemolytic Anemia:免疫介在性溶血性貧血)は、自分の免疫系が誤って赤血球を攻撃・破壊してしまう病気です。急速に重篤化し、輸血なしでは命に関わるケースも多く、供血犬の存在が文字通り命を救います。
IMHAとは?基本的なメカニズム
IMHAは、犬の免疫システムが自分の赤血球を「異物」と誤認し、抗体を産生して赤血球を破壊する自己免疫疾患です。赤血球が急速に失われるため、組織への酸素供給が著しく低下します。
IMHAには原発性(特発性)と続発性の2種類があります。原発性は原因不明で免疫系が誤作動するもの、続発性は薬物・感染症・腫瘍などが引き金となるものです。
| 種類 | 割合 | 主な原因 |
|---|---|---|
| 原発性(特発性) | 約60〜70% | 原因不明の免疫異常 |
| 続発性 | 約30〜40% | 薬物・感染・腫瘍・ノミ媒介疾患 |
主な症状と見分け方
IMHAの症状は貧血の進行度によって異なります。以下のサインが見られたら速やかに動物病院へ。
- 元気消失・虚脱:急に動かなくなる、横になったまま動けない
- 粘膜の蒼白・黄疸:歯茎や結膜が白くなる、黄色みを帯びる
- 呼吸促迫・頻脈:安静時でも呼吸が荒く、心拍数が増加
- 食欲廃絶・嘔吐:突然ごはんを食べなくなる
- 尿の変色:赤褐色〜コーラ色の尿(ヘモグロビン尿)
- 脾臓・肝臓の腫大:触診や画像検査で確認
注意:IMHAは24〜48時間で急激に悪化することがあります。少しでも異変を感じたら、自己判断せず獣医師にご相談ください。
発症の原因・誘因
続発性IMHAを引き起こす可能性がある因子には以下があります。
- 薬物(抗生物質・NSAIDs・ワクチンなど)
- 感染症(マイコプラズマ・バベシア・ライム病など)
- 腫瘍(リンパ腫・脾臓腫瘍など)
- ノミ・マダニ媒介疾患
- ストレス・外傷
なお、コッカー・スパニエル、プードル、アイリッシュ・セッター、シー・ズーなどは原発性IMHAへの罹患リスクが比較的高いとされています。
診断方法
IMHAの診断には以下の検査が用いられます。
| 検査 | 確認内容 |
|---|---|
| CBC(血液一般検査) | PCV(赤血球容積率)の低下・網状赤血球増加 |
| 血液塗抹標本 | 球状赤血球・赤血球凝集の確認 |
| クームス試験(DAT) | 赤血球に対する自己抗体の証明 |
| 生化学・尿検査 | 黄疸(ビリルビン上昇)・肝機能評価 |
| 画像検査(X線・超音波) | 脾臓・肝臓の腫大、腫瘍の除外 |
輸血が必要なタイミング
IMHAでは免疫抑制療法が根本治療ですが、急性期に赤血球が急速に失われた場合は輸血が不可欠です。
- PCV(赤血球容積率)が15%以下(正常は37〜55%)
- 急激な貧血進行で呼吸困難・意識低下
- 免疫抑制薬が効果を示すまでの「橋渡し」として
輸血は症状を安定させ、免疫抑制療法が奏功するまでの時間を稼ぐ「命をつなぐ治療」です。供血犬から提供された血液が、このような緊急場面で使われます。
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治療の流れ
IMHAの治療は、重症度に応じて以下のように進められます。
- 緊急安定化:酸素吸入・輸液・必要に応じて輸血
- 免疫抑制療法開始:プレドニゾロン(ステロイド)が第一選択。重症例にはアザチオプリン・シクロスポリンを併用
- 血栓予防:IMHA は血栓症リスクが高いため、抗凝固薬(ヘパリン・アスピリン)を使用することも
- 経過観察:PCV・網状赤血球数を定期的にモニタリング
- 薬の漸減:PCV が安定したら免疫抑制薬を数か月かけてゆっくり減量
治療期間は数か月〜1年以上に及ぶことも多く、定期的な通院が必要です。
再発予防と日常ケア
IMHAは再発率が高い疾患です。以下の点に注意しましょう。
- 定期的な血液検査でPCVをモニタリング
- ストレスの少ない環境づくり
- 獣医師と相談の上でワクチン・薬の使用タイミングを慎重に判断
- 高品質なフードで免疫系・栄養状態を維持
- ノミ・マダニ予防を継続