病気・緊急対応
猫の貧血と輸血治療
猫の貧血と輸血治療
症状・原因・判断基準を獣医師目線で解説
公開日:2025年4月18日
猫の貧血は犬以上に見逃されやすい病気です。猫はもともと体調不良を隠す習性があるため、飼い主が気づいた時点ですでに重症化していることも少なくありません。本記事では猫の貧血の原因・症状から輸血治療の流れまでわかりやすく解説します。
猫の正常な血液値と貧血の定義
猫の正常なPCV(赤血球容積率)は24〜45%です。これが24%を下回ると貧血と判断されます。重症度は以下の通りです。
| 重症度 | PCV値 | 状態 |
|---|---|---|
| 軽度 | 18〜24% | 運動不耐性・軽い元気消失 |
| 中等度 | 12〜18% | 呼吸促迫・食欲不振・粘膜蒼白 |
| 重度 | 12%未満 | 虚脱・開口呼吸・輸血が必要 |
猫の貧血の主な原因
猫の貧血は原因によって治療法が大きく異なります。主な原因を把握しておきましょう。
再生性貧血(骨髄が反応できている)
- 溶血性貧血:IMHA・バベシア・玉ねぎ中毒など
- 出血性貧血:外傷・潰瘍・凝固障害・寄生虫
非再生性貧血(骨髄が反応できていない)
- 慢性腎臓病(CKD):エリスロポエチン産生低下→最も多い原因
- 猫白血病ウイルス(FeLV)感染
- 猫免疫不全ウイルス(FIV)感染
- 骨髄疾患・腫瘍
- 栄養欠乏(鉄・B12・葉酸など)
見逃しやすい症状チェックリスト
猫は体調不良を隠すため、以下のサインに注意が必要です。
- 歯茎・口の粘膜が白い・青白い
- 以前より活動量が減った・高い場所に上らなくなった
- 食欲が落ちた・体重が減っている
- 毛並みが悪くなった・グルーミングをしなくなった
- 呼吸が速い・口を開けて呼吸している
- 心臓に雑音がある(重度貧血で生じることがある)
注意:猫は痛みや苦痛を隠すのが得意です。「なんとなく元気がない」という直感も大切にしてください。少しでも心配なら獣医師に相談しましょう。
動物病院での診断方法
| 検査 | 目的 |
|---|---|
| CBC(血液一般検査) | PCV・赤血球数・ヘモグロビン値の確認 |
| 網状赤血球数 | 再生性か非再生性かを判断 |
| 血液塗抹標本 | 赤血球の形態・寄生虫の確認 |
| 生化学検査 | 腎機能・肝機能・電解質 |
| FeLV/FIV検査 | ウイルス感染の除外 |
| 超音波検査 | 腎臓・脾臓・腫瘍の確認 |
輸血が必要な状態の基準
猫への輸血は以下の状況で検討されます。
- PCV 15〜20%以下で臨床症状が出ている
- 急速に貧血が進行している
- 外科手術が必要で術中の低血圧リスクがある
- CKD等の基礎疾患で内科的治療のみでは改善が見込めない
猫の輸血は供血猫から採血した全血または濃縮赤血球を使用します。適合性を事前に確認することが非常に重要です。
猫の血液型と輸血の注意点
猫の血液型はA型・B型・AB型の3種類です。犬と異なり、猫は最初の輸血でも不適合反応が起こることがあります。これは猫がもともと異型血液に対する抗体(異種血球凝集素)を持っているためです。
| 血液型 | 割合(日本) | 注意点 |
|---|---|---|
| A型 | 約90〜95% | B型血液を輸血すると重篤な反応 |
| B型 | 約5〜10% | A型血液でも反応が起きる可能性 |
| AB型 | 非常に稀 | 万能受血者 |
輸血前には必ずクロスマッチ(適合試験)を実施します。
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輸血後のケアと回復
輸血後は以下の点に注意して経過観察します。
- 輸血後24〜48時間は入院管理が一般的
- 発熱・嘔吐・呼吸困難などの副作用がないか監視
- PCV・バイタルサインを定期的に測定
- 退院後も1週間以内に再検査を推奨
- 根本原因(CKD・ウイルス感染など)の継続治療